刊行書籍一覧
『実験区域』
1970年/昭和45年4月
社会新報刊 新書 絶版
「小説・実験区域」
『アルカ小屋』
1983年/昭和58年4月近代文芸社刊 絶版
「アルカ小屋」「煙突長屋にて」
「墓標」「曲芸」「転封録」所収
『霖雨の賦― れぷぶりか短編選』
1986年/昭和61年9月日本図書刊行会刊
「アルカ小屋」所収 文庫本 絶版
『夢の終わり』
2007年/平成19年11月新風舎刊(在庫僅少)
「夢の終わり」「アルカ小屋」所収 化野元名義 絶版
『チグハグな春』
2009年/平成21年3月
郁朋社刊
発売中です
作品発表一覧
「アルカ小屋」
1965年/昭和40年10月発表 短編昭和41年作品同人誌推薦作として
「文学界」に掲載され、同年上期第
55回芥川賞最終候補作品になるも、
同期受賞者なし
「墓標」
1967年/昭和42年6月発表 短編「夢の終わり」の前駆的作品
「煙突長屋にて」
1969年/昭和44年5月発表 短編「チグハグな春」の豊洲部分の若書
「実験区域」
1970年/昭和45年4月発表 長編日本の自衛隊を外国に派兵した
らどうなるかという、当時としての
近未来小説
「曲芸」
1971年/昭和46年8月発表 短編自己描写の形を借りた文体実験
「転封録」
1981年/昭和56年5月発表 短編石田三成との共謀を疑われて常
陸五十万石から秋田二十万石に
国替をされた佐竹義宣を借りて、
戦に負けるとは如何なる事かを
書こうとした作品
「夢の終わり」
2007年/平成19年11月発表 長編「チグハグな春」
2009年/平成21年2月発表 長編「父よ許し給え」
2009年/平成21年11月Web発表 中編「焼きむすび」
2010年/平成22年1月Web発表短編 「墓標」改稿
「アルカ小屋」
2010年/平成22年9月Web発表短編 有料販売
2009年5月31日「信濃毎日新聞」に掲載された書評です
ふるさと 長野の本■「チグハグな春」(大野正重著)
昭和9(1934)年生まれの著者は、太平洋戦争末期に昭和20年2月末、国民学校4年生の時に、 東京から長野市松代に疎開、そこで敗戦を迎えた。その実体験を基にした小説。主人公は、戦 争と戦後の混乱の中で過ごした少年の日を振り返り、あの戦争とは何だったのかを問い返す。
飢えた子どもたちの食べ物をめぐっての争い。皆神山の山腹に見えた大本営工事の現場。 がけの急斜面を死ぬ思いで下りた地蔵峠への「行軍演習」。そんな疎開生活の中で、「僕」は 「どこかチグハグ」な違和感を抱く。大人たちの大方はそのとき既に「戦争の行く末に望みを失 っていた」ように見えた。だとすれば、もっと早く戦争を終わらせることはできなかったのか。その 責任は誰にあるのか。
敗戦の玉音放送の日。泣く6年生を前に、「僕」は「泣く必要なんか、これっぽっちも有りはしない じゃないか」と思う。「何しろ『負けたのは僕じゃない』のだから」
帰京して目にした東京の惨状。男女共学になった新制中学へ入り、敗血症での闘病を経て高校 へ入学した年、朝鮮戦争が始まった−。
著者は東京在住。これまでに、1966年上半期の芥川賞候補となった「アルカ小屋」などの作品が ある。